The Official Hokkaido Adventure Travel Guide

2026年05月08日

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留寿都村の高原リゾートに学ぶ、食と自然のアドベンチャー体験

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蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山の麓に広がる、自然豊かな美しい高原の村、留寿都。旅の拠点となるルスツリゾートは、スキー場やゴルフ場、遊園地など、四季を通してさまざまなアクティビティが楽しめる総合リゾートだ。動物と環境に配慮した持続可能な牧場運営や、食の多様性への取り組み、洞爺湖までの絶景サイクリング体験を通じて、地域の食文化と自然に学ぶウェルネスな旅が実現できる。


動物と環境に優しいファーム運営

爽やかな風が吹き抜ける留寿都村の放牧場で、羊たちがのんびりと草を食んでいる。

北海道の食文化に欠かせない羊肉だが、日本に流通する国産羊肉はほんの1%にも満たない。ルスツリゾートの直営牧場「ルスツファーム」では、「安心・安全を届けたい」という想いで2011年より、羊26頭から飼育を開始。羊蹄山麓の豊かな水や土壌、自然に恵まれた地元の食ブランドを担うべく、ルスツファームで育てた羊を「羊蹄ひつじ」としてブランド展開している。

現在、テクセルとサフォークの2種、520頭の羊たちが暮らす。テクセル種は白い顔が特徴で、臭みのない赤身肉が希少な最高級品種。サフォーク種は黒い顔が特徴で、羊らしい旨味がある。イギリスのアニメ『ひつじのショーン』のモデルになったとされる品種だ。

サフォーク種のお母さん羊を可愛がる、ルスツファームの米倉倫さん

飼育スタッフは5人中、3人の女性が活躍する。「女性ならではの母性が活かされていると思います」と話すのは、チームリーダーを務める米倉倫さん。毎年1月から4月にかけ、約200頭の仔羊が産まれてくる。羊は産道が狭いため、難産の場合は女性飼育員が細い手を突っ込んで取り出す。アニマルウェルフェア(ストレスのない飼育環境)に配慮した放牧を心がけ、暑さに弱い羊のために日陰を作り、短い草を好むため余計な草を刈る。

米倉さんが呼ぶと、たちまち羊たちが集まってくる。「この子は友だちなんです」と、米倉さんが優しく羊の首元をさすると、4歳のお母さん羊は嬉しそうに目を細める。

ラム肉として生後8ヶ月頃から、マトンとして6~7歳頃に出荷する。食肉を育てるという重責について、「『美味しくなれ』と思いながら育てています。でも、いざ出荷となると…羊たちを運べないですね。そこだけは男性スタッフに任せています」と、米倉さんは心痛を漏らす。愛情を込めて育てる命だからこそ、「信頼できる業者に出荷して、フィードバックをもらうこと」を大切にしている。近年は店舗側から「味が年々、良くなっている」という評価をもらっているという。

羊舎の中でアニマルウェルフェアの取り組みについて説明を受ける

羊舎も案内してくれた。春から秋にかけて放牧を行い、雪に覆われる冬季に羊たちは羊舎で過ごす。新鮮な青草を食むことができない時季によっては、廃棄野菜を羊の飼料として活用することがある。例えば、苫東ファーム株式会社と北海道コカ・コーラボトリング株式会社との共同で、いちご栽培で生じた葉やランナー(茎)を活用する取り組みを実施。それにより廃棄物削減のみならず、廃棄処理にかかるCO2やコストの削減、羊の肉質のさらなる向上が期待できる。

また、毎年5月に刈り取る羊毛の一部は「ルスツウール」として活用。ブランケットやキーホルダーといったオリジナルの商品展開のほか、専門業者に原毛を買い取ってもらうなど、サステナブルなファーム運営を目指している。

愛情を受けて育つ羊たちの表情は実に穏やかで、それぞれに個性があることも知った。ルスツファームの牧場は一般公開されていないが、期間限定でルスツリゾート内の「ひつじひろば」で見学ができる。触れ合い体験やシープドックショーなど、夏季の週末限定イベントも人気で、観光や地域活性化に貢献している。

命の循環と食の多様性

レストラン「パブ・クリケット」では、ハイテーブル中心の気軽な雰囲気で地元の本格グルメが味わえる

可愛らしい羊の見学後になんとも複雑な気持ちにもなるが、米倉さんたちが心を込めて育てた貴重な羊肉をぜひ味わってほしい。ルスツリゾートホテル内のレストラン「パブ・クリケット」では、ルスツファームの羊100%を使用したボリューム満点のハンバーガーを提供している。

一口食べて、驚いた。羊特有の臭みがほとんどない。脂は甘くジューシーで、質の高い上品な味わい。パティに練り込まれた北海道産の行者ニンニクの風味と、甘じょっぱい照り焼きソースとよく合う。バンズはホテル内の専用ベーカーで焼き上げるこだわりの逸品だ。

生産者の顔が見える安心感。それと同時に、“命”をいただく責任。それは肉、魚、野菜、すべての食に通ずる。命の循環に感謝し、美味しく残さずに食べること。それらの命を育む環境への配慮も含めて、観光をしながら食の学びにつながる貴重な体験となる。

昨今はインバウンド需要も手伝い、食の多様性に対するニーズが高まっている。同店では大豆ミートを使用したヴィーガンバーガーが好評だ。大豆ミートは柔らかで香ばしい肉の味わいそのもの。北海道産の玉ねぎの甘みも際立ち、満足感の高いクオリティはヴィーガン層に関わらず人気というのも頷ける。

特に冬季のルスツリゾートでは、外国人観光客が全体の3分の1を占めるという。ヴィーガンやベジタリアン、アレルギーの方も安心して長期滞在できるよう、リゾート全体で多様な食の選択肢を提供している。

「ダニエルストリート サラダ&デリ」のスタッフおすすめサラダとヴィーガン対応のサンドイッチ

例えば、サラダがメインの店「ダニエルストリート サラダ&デリ」。ベースの具材からトッピング、ドレッシングまで自由に選んで自分好みのカスタムサラダが注文できる。バランス良く簡単に注文したいなら、スタッフおすすめのサラダ4種から選ぼう。
サンドイッチもヴィーガン向けを用意する。バケットはトマトを練り込んだホテルメイドのフランスパン。このカリふわ食感が秀逸で、フレッシュな具材をより贅沢に引き立たせる。

フードロスに配慮し並べられたフレッシュな野菜

旬の新鮮な野菜を安定的に提供できるよう、発注は無駄なくこまめに行うという。食材の状態を見ながらリゾート内の他店舗と補填し合うなど、フードロス削減に向けて柔軟な連携に努めている。
また、留寿都村内で作られる豆腐や、ルスツファームで育てるアスパラ、アロニア(ベリー系の果実)といった地産地消をなるべく取り入れている。食の志向や制限がある方でも楽しめる、地元の美味しさと優しさがここにある。

洞爺湖までの絶景サイクリング

地域の食事を堪能したら、大自然を満喫できるサイクリングに出かけよう。体力に多少自信があるなら、留寿都から洞爺湖畔まで約25kmをマウンテンバイクで走破するダイナミックコースがおすすめだ。

ガイダンスを行うツアーガイドのブンさん(写真中央)

案内してくれたのは、ガイド歴16年の気さくなブンさん。ネパール出身で、日本語、英語ともに堪能で頼りになる。出発前にギアやブレーキの説明、軽いウォーミングアップがあるため、マウンテンバイクに乗り慣れていなくても安心できる。

牛たちが見送ってくれるサイクリングコースのスタート付近

スタート地点は、牧場がある高台の森林地帯。さっそく人懐っこい牛たちが、興味津々に近寄ってくる。コースの前半は、アップダウンのある森や畑の中を駆け抜ける。ダート道を下るスリルと疾走感はマウンテンバイクならではの醍醐味だ。全身で風を切り、大地のエネルギーを細胞の隅々まで感じる。

白樺の木が生い茂る明るい森で鳥が鳴き、笹の葉やススキが風に揺れる。紅葉が少しずつ色づき始めていた。途中、「これはキツネの糞です」とブンさんが教えてくれる。シカやキツネ、タヌキなどもこの森に暮らしているという。

コースの途中では洞爺湖の風景を一望できる。対岸に見える最も高い山が有珠山

心地よい疲労を感じる頃、ふいに森が開けた。視界の先には、絵画のように見事な洞爺湖の風景が広がっている。洞爺湖は11万年前に巨大噴火で誕生した美しいカルデラ湖だ。

この地域は「洞爺湖有珠山ジオパーク」として、ユネスコ世界ジオパークに認定されている。今なお火山活動を続ける有珠山や、1944年に始まった噴火活動により突然隆起してできた昭和新山(なんと個人の所有物!)の歴史など、興味深い話を聞くことができた。
この日は曇り空だったが、変化に富んだ山々の稜線がくっきりと確認できる。まるでご褒美のような絶景に心身が浄化されてゆく。

コースの後半は、洞爺湖畔の景色を楽しみながらアスファルトの平坦な道を走る。春には桜のトンネルと化す美しい街道を走るチャンスもあるという。

ゴール地点の洞爺湖畔。サイクリングツアーはオーバーツーリズム対策にも最適

北海道トライアスロンのコースにもなっている洞爺湖の砂浜が近づいてきた。ゴールの達成感を、波の音が静かに迎え入れてくれる。自ら体を動かすことで、その地域の文化や自然をより身近に体得できる、とても豊かな時間になる。

大自然でありながらアクセスは抜群。新千歳空港から約120分、ルスツリゾート行きのシャトルバスに乗るだけでいい。重い荷物を抱えて電車を乗り継ぐ必要も、慣れない道をレンタカーで走る必要もない。車窓からの景色を楽しんだら、あとは留寿都村での特別な体験が待っている。

《聞き手・記事制作》時事通信社 札幌支社

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