Q.ご自身のとっておきロケーションの温泉は?
- 小野寺
- 海山など環境別にいろいろありますが、まずオーシャンビューでいうと、「海の別邸ふる川」(白老町)はパッと思い浮かびますね。
- 髙野
- 私は、湯の川温泉の「イマジン ホテル&リゾート函館」(函館市)とかですね。
- 朝香
- 確かにあそこはいい!
- 髙野
- あの展望露天風呂、函館山はもちろん、青森まで見えて景色は最高ですよ。
- 依田
- 海の向こうに島が見える温泉もいいですね。夏に「花れぶん」(礼文町)に泊まりました。内風呂には映画館のスクリーンさながらの横長の窓がデーンと。そこから見える利尻富士の夕景は、もう絶景でした。「羅臼の宿まるみ」(羅臼町)の早朝露天風呂も印象深いですね。近くて遠い国後島が横たわり、根室海峡の潮目が日本一早い朝焼けのオレンジ色に染まる姿は、感慨深いものがありました。
- 髙野
- 根室地域で海が見える温泉は貴重なんですよね。「尾岱沼温泉シーサイドホテル」(別海町)も、野付湾が見えて良かったです。
- 小野寺
- やっぱり海の温泉は盛り上がるなぁ (笑)。山の温泉なら「まっかり温泉」 (真狩村)のように麓から羊蹄山の全容を堪能するのもいいし、標高1280mもある「十勝岳温泉 湯元凌雲閣」 (上富良野町 )の露天風呂から大雪の峰々を眺めるのも贅沢ですよね。
近年誕生した温泉では「しこつ湖 鶴雅別荘 碧の座」(千歳市)の眺めが素敵。客室露天を堪能して、涼みながら高台から見下ろす青い支笏湖は、湖畔の宿で初めて見る景色かも。
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Q.最近注目している温泉地とか施設はどんなところですか ?
- 小野寺
- 駅前などに多いビジネスホテルの温泉が気になっています。最近は温泉地に負けずレベルが高いところがいっぱい。「ルートイングランティア知床斜里駅前」(斜里町)なんか自家源泉から湯船までの距離が驚くほど近くて、しかもタンクに溜めずに直接引いてるの。新鮮そのものの温泉で抗酸化力ばっちりです。
- 朝香
- 小野寺さんの大好きなナマ源泉だ!
- 髙野
- まさに先日、斜里駅前でそのルートインからの「グリーン温泉」(斜里町)、私行っちゃいました(笑)。斜里のモール温泉の香りが好きなんだよなぁ、そしてグリーンさんって地元の漁師さんがよく来ていて、地元の雰囲気をお風呂場で感じられるのが楽しいんです。
- 依田
- 地元の雰囲気といえば、取材で羅臼の「高島屋旅館」にちょうどイカ漁の時期に宿泊しましてね。秋口の羅臼には、全国からイカ釣り船が集結します。にごり湯の湯船には私含めて3人。長崎県の離島と石川県の漁師さんが、それぞれの漁法の違い?を語り合うのを私は横で聞いていて。それぞれのお国言葉も結構あって、もうめちゃめちゃ面白かったです(笑)。これもその土地ならではの「普段着温泉」の魅力でしょうか。
- 小野寺
- 観光地の温泉の行き帰りに、駅前・街ナカの「普段着温泉」も足していくと、温泉旅の楽しみがとても広がりますよね。
- 髙野
- 温泉であることは同じでも、そこに来る人も雰囲気も全然違っていて、ジャンルとしては似て非なるものですね。どっちも楽しめます。
- 依田
- 駅前・街ナカといえば函館ですね。駅前、湯の川と市電で行けるので、運転できない方でも十分楽しめます。帯広なら「ふく井ホテル」!!お湯はもちろん、朝食がとっても美味しい!
- 朝香
- わかる!(笑)駅前温泉といえば札幌にも「JRタワーホテル日航札幌」がありますね。
- 小野寺
- そうそう、実は男湯と女湯の造りが違うんですよね。
- 朝香
- 私もちょっとだけ見させてもらったんですが、男湯は檜風呂でしたよね。
- 依田
- そうですね。女湯は、確かパンフレットでは、白くてジャグジー付きの湯船だった気が・・・
- 小野寺
- エステ感覚の本格派マッサージバスですよ。3周すれば痩せられるかも。檜風呂に入った旦那さんとは、入浴後の感想を共有しにくいかなぁ(笑)。
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Q.1日何軒の湯めぐりをしますか?
- 小野寺
- 入浴調査なら温泉地に行けばあるだけ入ったものだけど、取材撮影となるとお料理もつきものなので‥。1日で海の温泉を5軒回って5種類の夕食膳を全部食べ切った夜は、名物のイカが夢に出てきました(笑)。今は取材も件数を減らしてお湯も食事もゆっくり味わうようにしています。高野さんは?
- 髙野
- 道外ですが、私は1日最高25軒くらい。道内なら10軒くらいが最高ですが、最近そういう湯巡りはしていないですね。
- 朝香
- 私の場合、2泊3日で25軒。本当は1カ所でゆっくり入りたいのですが、その時一緒に行った友人が湯めぐり大好きで。数多く入りすぎるのも身体にはあまりよくないので、本当はおすすめできません。
- 依田
- 私は入った温泉の余韻をしっかりと自宅でも楽しむのが好きなので、せいぜい2〜3軒くらい。あと、車で出かけたら運転して帰らなきゃいけないので、帰りの体力を残す意味でも少な目で(笑)。
- 朝香
- お風呂入ったら、もう帰りたくないですよね(笑)。
- 小野寺
- できれば同じ露天風呂で、朝夕の景色の違いまでも楽しみたいです。
- 髙野
- 誰と一緒に温泉に行くかにもよりますしね。
Q.では「家族と行くなら」「一人で楽しむなら」といった、メンバー別のおすすめ温泉は?
- 依田
- 子供と一緒に温泉に行く機会が多いので、そう何軒も巡れません。ただ気持ちは欲張りなので、1カ所で5つの泉質を楽しめる「第一滝本館」(登別市)が我が家にはぴったりですねぇ。
- 朝香
- ファミリーで行くのに、ほかにおすすめの温泉はありますか?
- 依田
- 我が家の子供たちは、「くるみの湯」や「祝梅温泉」(ともに千歳市)が、最近のお気に入りですね。実家的な飾らない雰囲気と、優しい肌触りで色がついているお湯がいいのかなぁ・・・
- 小野寺
- 渋いお子さんだなぁ (笑)。私のおすすめは子供にも親にも気配りを感じる「シャトレーゼ ガトーキングダムサッポロ」(札幌市)。親子で川の字になって眠れるベッド付きの部屋や、ビュッフェのお子様メニューの多彩さなど、温泉以外もいいんですよ。思いっきり遊ぶなら、「きたゆざわ森のソラニワ」(伊達市大滝区)や、「KIKI知床」(斜里町)などもおすすめかな。
- 朝香
- 私が今、全国紙の新聞のデジタル版で連載しているテーマは、「女子ウケする温泉」なんですが、女性向けで北海道のおすすめ温泉はありますか?
- 小野寺
- この定山渓なら、女性専用の温泉もありますよ。
- 朝香
- もしかして「翠蝶館」?実は明後日、泊まります!結構予約が埋まっていましたよ。私の予約も最後の一部屋だったみたいです。
- 小野寺
- 絶対寛げますよ。薬膳が最高に美味しいし、健やかな眠りに誘うための素敵な寝湯もあるし。エステメニューも豊富。女性のご褒美系ですね。
- 朝香
- 女性向けに特化したお宿って、北海道ではこれから伸ばせる分野ですよね。
- 小野寺
- 例えば「美肌の湯」というだけじゃなく、ヨーロッパの温泉地みたいにスリムアップや美顔などもっと細分化したプログラムがあってもいいんじゃないかしら。女性には共感されると思いますね。
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Q.個人的に好みの温泉のタイプは?
- 朝香
- よく聞かれるんですが、いつも困るんです(笑)。それぞれに良いところがあるから、どれと言われると困っちゃう。しいて言うなら泉質は、硫黄泉ですね。においだけでもうテンションがあがります(笑)。
- 依田
- あー、硫黄泉!最高ですよね。道南だったら「ひろめ荘」(函館市)。光の加減で、白にも青にも緑にも見えるお湯は、神秘すら感じます。最近ハマっているのは、2本の源泉がある「芦別温泉スターライトホテル」(芦別市)。浴場の扉を開けた瞬間に漂うほのかな香りでワクワク感は増すし、リニューアルして親子連れにとても優しくなりましたね。
- 小野寺
- 私は自分の肌質に対しては強酸性泉ですね。
- 依田
- ガツンときますね(笑)。
- 小野寺
- 若い頃、この泉質で慢性の皮膚疾患が軽減した経験がありまして。温泉に詳しくなれば一生薬を使わずに済むと思い、そこから真剣に勉強したのが、今の仕事に繋がっています。
- 朝香
- 道内でおすすめの強酸性泉はありますか?
- 小野寺
- 個人的な話の延長ですと泉質が2種類ある「凌雲閣」(上富良野町)のぬる湯ですね。赤湯ではなく、透明な方。同じ地域の「吹上温泉」 (同)もいいし、道南の「恵山温泉」(函館市)、道東なら「川湯温泉」(弟子屈町)も。ワイルドな野天湯の「カムイワッカ湯の滝」(斜里町:知床)も最高ですね。
- 髙野
- 私は泉質と同じくらい温度が大事。ちょっとぬるめで、ゆっくり浸かれるのが好きですね。
- 朝香
- とろけそうですよね。
- 髙野
- はい、とろけます(笑)。
- 依田
- 先日行った「杢の抄」(ニセコ町)の露天風呂も、絶妙な湯加減でした。はらはらと小雪も舞い雰囲気も最高で。ガツンとくる熱い湯に、チャッと入ってチャッと出るのも好きですよ。朝風呂はこれに限る!
- 小野寺
- 熱い温泉って、女湯だと「水を入れなさい」って言ってくれるんですが。男性湯は厳しいみたいね。
- 髙野
- 男湯は厳しいところもありますね(笑)。
- 小野寺
- 湯の川温泉の銭湯「永寿湯温泉」(函館市)だと、ぬるい方で47〜8度くらいありますから。
- 朝香
- 私、46度くらいまでなら入れます(笑)。
- 依田
- 相当熱いですよ!
- 小野寺
- 足を入れるとニンジンみたいになりますね(笑)。でも、温度も大事ですね。
- 髙野
- どの温泉が良いかって、結局「相性」だと思うんです。雰囲気か、泉質か、温度か、肌触りか。行ってみてわかることもある。それを探すのも面白いと思いますよ。
- 依田
- それぞれの温泉の特徴が伝わるよう、まず湯守や施設の方が、自分の湯どころの魅力をしっかり理解する。そして温泉ソムリエのような存在が、それぞれの目線で補完して、車の両輪のような形で情報発信できたら、もう北海道の温泉は「鬼に金棒」だなと強く思います。
- 小野寺
- 本当ですね。私たちもお役に立てればいいのだけど。また、温泉に興味がある人たちが、知らない温泉をめぐってみたいというときに土地勘がないと難しいので、回り方の参考になる情報発信も必要ですね。車がない人に対しては特に。
- 朝香
- モデルコースみたいな。それでいうと、北海道の距離感って全然知られていなくて。先日、私の友人が北海道来た時の話が「知床から銀婚湯(八雲町)まで車で湯めぐりしつつ※1日で移動したい」って(笑)。<※東京から岡山県境までの距離に相当。約610km>
ガイドブックにはモデルコースがよく載っていますよね。今はそれをウェブに求める人が多いようで、編集部からもおすすめモデルコースの執筆を依頼されることが多いです。
- 依田
- えっ、本当ですか!ウェブやSNSの普及で、よりカスタマイズした自由な旅ができる時代だから、モデルコースってあまり必要ないのかなと思っていました。
- 小野寺
- きっと皆さん、失敗したくないんじゃないかなぁ。
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Q.泉質のよさってどういうことでしょう?
- 依田
- テレビの温泉特集などでは、温泉の「効能」は、どんな泉質でも「神経痛・疲労回復」と紹介されがちです。温泉ソムリエの講義を受けた時に「神経痛は家のお風呂の白湯に入るだけでもよくなります」と言われて、すごく衝撃でした。効能って、何?と(笑)。それ以来私が担当する番組では、表現に気を付けています。
- 小野寺
- 温泉は「効能」ではなく「適応症」ですからね。効能という言葉は誤解を招くと危惧しているのですが、利用する側も温泉って「眉唾モノ」と思っているのでしょうか、「アレにも効く、コレにも効く」と法律に抵触しそうな文言が書かれていても、文句を言う人はほとんどいない。
- 依田
- 北海道には多種多様な泉質があるので、もっと個別の情報を伝えるべきではと思います。
- 朝香
- もったいないですよね。せっかくの泉質を無駄にしてしまう使い方をしている施設もありますし。
- 小野寺
- 同じ泉質でも、海の温泉と山の温泉とでは転地効果も違う。風呂の造りでも異なってくる。もう一歩踏み込んだ情報があれば、北海道は本来敵なしですよ。
- 依田
- 北海道独自の指標を導入したらどうでしょうか。まだ温泉に詳しくないけれど温泉好き、という方に、分かりやすく伝えることがとても大事だと感じます。例えば、ただ「美肌の湯」と書くより、pH値がいくつのお湯だから、お肌のクレンジング効果は5段階中の4ですよ、などの貼り紙が脱衣所に1枚あると、よりわかりやすいのかなと。
- 朝香
- 一口に同じ「美肌の湯」といっても、それぞれ期待できる美肌効果が違いますしね。どういうタイプなのか、もっと詳しい方が…。
- 小野寺
- その点では豊富温泉(豊富町)は明快です。アトピー改善に人々が集まりますし、街ぐるみの取り組みもいいですね。ただ、豊富と違うお湯が合う方もいますし、せっかくなら、色々な温泉も試してほしい、幅広い情報をみんなで共有できればと思ったりします。
- 髙野
- ひとつの町、ひとつの温泉地だけではなく、広域のエリアで温泉の特徴のPRに取り組めるといいですね。
- 朝香
- 自粛期間もあって、先日久しぶりに温泉に入ったら、「生き返るなぁ」って思いました。やわらかい肌になれたし、解放感に浸れて大満足です。
Q.長引くコロナ禍ですが、温泉が果たす役割は?
- 小野寺
- 私の知る限り、施設側では入館時の除菌・検温や夕朝食のブッフェなどでも対策はかなり整っていて、利用者側も大声を出さないなど双方に予防意識が感じられます。入浴施設自体、定期的に検査が実施され衛生面への意識は高いですし、本質的に入浴は身体を清めることですから、コロナ禍でも必要な存在であると思っています。
- 依田
- 制限だらけ、遠くに行けない、日常は見えないストレスで溢れています。そんな中で、近場の温泉の湯殿にマスクをとって静かに浸かる、あーという声と共に、心も体もほぐれる音が聞こえるよう・・・この瞬間がとても贅沢に感じました。家のお風呂より温泉っていいなと思った方も多いと思います。北海道には、大抵の温泉好きの欲求を満たす豊富な温泉があります。「近場の温泉の魅力」を再認識する人が、コロナを機に増えることを期待しています。
- 朝香
- 温泉側の予防対策は本当に熱心で、今は各施設でちゃんとしたマニュアルが確立されてきています。きちんと対策された温泉宿ではクラスターが起きにくいと語る医師もいます。感染リスクを気にしすぎて、リラックスできないことは、かえって免疫力を下げて感染しやすい状態を招く恐れも。どうしても気になる方は、部屋食や温泉付き客室がある旅館もあります。温泉に来て、リフレッシュして楽しんでいただきたいです。
- 髙野
- 朝香さんの言う通り、特に部屋食はお客さんから見て安心感がある、と今見直されているように思います。この状況は、日本の旅館型サービスの中で少し前まで「時代遅れ」だと思われていたサービスが見直されたり、新たに似た様なリスクが来ても変えなくてよい新しいサービスが試行錯誤のうえで生まれる機会になるかもしれませんね。安全に寛げるよう温泉がどう進化してゆくのか、楽しみにしています。(終)
– 会場協力 –
定山渓万世閣ホテルミリオーネ
– お菓子 –
定山坊まんじゅう