真冬の然別湖に現れる幻の村「しかりべつ湖コタン」
冬の時期にだけ現れる、氷と雪でできた幻の村……それが「しかりべつ湖コタン」。コタンとは、アイヌ語で「村」という意味です。しかりべつ湖コタンの始まりは、然別(しかりべつ)の厳しい冬を楽しもうと、3人の若者がアイスブロックでできた家"イグルー"を作ったことでした。
それから40年以上の月日が経った今でも、然別湖を楽しみたい、楽しんでもらいたいという思いをこめて、ボランティアの人たちがコタンを作っています。まるで物語の中にまぎれこんだかのような美しい光景に、あなたも出会いに行きませんか?
天空の湖「然別湖」ってどんなところ?
幻の村の舞台となるのは、"天空の湖"の別名を持つ「然別湖」。帯広市内から車で80分ほどの場所にあり、北海道で最も標高の高い自然湖です。
周囲は原生林に囲まれた自然豊かな環境で、クマゲラやオジロワシ、シマフクロウなどの珍しい鳥類に加え、氷河期から生息していると言われる「エゾナキウサギ」も暮らしています。北海道観光PRキャラクター「キュンちゃん」のモチーフなんですよ。
60日間だけ姿を現す、氷と雪の幻の村
冬が訪れると、標高が高い然別湖周辺ではぐっと気温が下がります。マイナス30度を下回ることも珍しくない極寒の中、湖は60cm~100cmもの厚さの氷に覆われていきます。そして、その氷の上に幻の村「しかりべつ湖コタン」が現れるのです。
氷で手作りした"アイスグラス"で乾杯!
村でもっとも大きな建物は、「アイスバー」と「アイスホール」が連なったイグルーです。
中は驚くほどの暖かさ。ほっと一息ついて中を見渡すと、柱やテーブルまで、すべてが氷で作られていることに驚かされます。
このイグルー、年によっては2階建てになることもあるそうです。もちろん2階へ上がっても薄氷を踏むような恐怖心はなく、むしろ建物を支える氷の強さを改めて思い知ることができるそうです。
幻想的なイグルーをひと通り楽しんだら、アイスバーで乾杯!ここでは、氷で作られたアイスグラスでドリンクを楽しむことができます。カラフルなカクテルはまるで宝石のようで、非日常の気分がさらに高まりますよ。
アイスバーに併設されたホールでは、週末を中心にコンサートが開催されます。雰囲気にマッチする美しい音色や冬の寒さに負けない熱量をもった歌声がホールに響きわたり、訪れた人を楽しませてくれます。
幻想的な光が美しい、アイスチャペル
その年によってデザインが大きく変わる「アイスチャペル」も訪れた人々を魅了します。アイスチャペルでは、毎年数組のカップルが実際に式を挙げています。
日中のチャペルの内部は、イグルーの氷越しに差し込んだ光で青白く輝く幻想的な世界。耳をすませば雪が積もる音が聞こえてきそうなほどの静寂に包まれた教会は、神聖で荘厳な空気に満ちています。
2月中旬から毎晩開催される「キャンドルナイト」では、揺らめくキャンドルが心安らぐ温かみのある空間を演出します。ロマンティックな教会でのひとときは、忘れることのできない思い出になるはずです。
銀世界と星空を楽しむ、氷上露天風呂
しかりべつ湖コタンの滞在で体が冷えたら、名物の「氷上露天風呂」で温まりましょう。外気温と湯船の温度差が50度近くにもなるような日は、お湯に入ると手足がしびれるような感覚になりますが、それがおさまってくる頃には、一面の銀世界を見渡しながら露天風呂を満喫できる天国のような時間が待っています。しかも温泉は源泉かけ流し。鉄分を多く含んだ茶褐色の濁り湯は、体を芯から温めてくれます。
日中は混浴となりますが、水着を着用しての入浴が可能で、18時以降は時間帯で男女が区切られています。街灯りがない然別湖で見上げる夜空には無数の星が広がっていて、日中とは全く違う景色を楽しむことができます。昼も夜のどちらも素晴らしい体験となることは間違いありません。
宿泊は、湖畔にある唯一のホテル「ホテル風水」で。また、コタン内にもイグルーに宿泊できる「アイスロッジ」があるので、こちらで一夜を明かすのも楽しそうです。
遅い雪解けとともに消えゆく”幻の村”
やがて春になり、然別湖にも遅い雪解けが訪れる頃、コタンは静かに湖に帰っていきます。
それからの然別湖は、豊かな自然とアクティビティを楽しむ人々で賑わいます。国内有数の透明度を誇る湖にカヌーやカヤックで乗り出すと、湖底で泳ぐ魚の姿まで見ることができます。また、紅葉や湖底線路も美しく、フォトジェニックなスポットとしても人気を集めています。
そして冬が訪れると、また幻の村が現れるのです。