写真家が切り取る、夏の北海道の絶景7選
北海道にも本格的な夏が到来!雄大な自然が広がる癒しの各地で出会う素晴らしい景色は、思い出として心に焼き付けるだけでなく、写真にも残しておきたいもの。そこで今回は、長年北海道でプロカメラマンとして第一線で活躍する岸本さんに、この時期におすすめする北海道の絶景スポットをお聞きしました。さぁカメラを片手に、絶景探しの旅へ出かけよう!
※見学の際は、観光マナーや撮影ルールを守ってお楽しみください。
※新型コロナウイルス感染症の影響により、営業日・営業時間等に変更がある場合がございます。公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
選んでくれたのはこのお方!札幌在住の写真家、岸本日出雄(きしもと・ひでお)さん
<プロフィール>
北海道網走国定公園サロマ湖のある佐呂間町出身。株式会社札幌コマーシャルフォト代表。(公)APA日本広告写真家協会会員、日本写真芸術学会会員、日本自然科学写真協会会員、北海道豊頃町観光大使(ジュエリーアイス)
北海道の大自然とそこに棲む野生動物、野鳥などの生命力と美に魅了され「命、一瞬の輝き」をテーマに国内外に発信している。2018年に発表した写真集「ジュエリーアイス」が海外で好評を博す。ロンドンワールド展(審査員特別賞)、スイスローザンヌなどで展示されるほか、マルタ共和国芸術祭に招聘される。ジュエリーアイスポスターが日本観光ポスターコンクールにて3年連続入賞。
支笏湖・樽前ガロー
「空港から降りたったら、ぜひ両方訪れて欲しい」と、岸本さんも太鼓判を押す場所「支笏湖・樽前ガロ―(苫小牧)」。北海道の空の玄関口・新千歳空港から車で約40分。支笏洞爺国立公園内にある支笏湖は、手軽に大自然を楽しめるスポットとして人気です。また、支笏湖から車で約1時間の場所にある樽前ガローは、その美しい光景を見るために多くの写真家などが訪れる、知る人ぞ知る絶景スポットです。
■支笏湖
支笏湖は、手軽に大自然を楽しめる癒しの絶景スポット。環境省発表の湖沼水質ランキングで過去に何度も日本一に選ばれているほど、透明度の高いクリアな湖水に目を奪われます。カヌーやダイビングなども楽しむことができ、大自然に癒されること間違いなし。昼間は人が多いため、朝早めの時間帯がおすすめです。清涼感のある穏やかな写真が撮れます。
岸本さんおすすめの写真スポットが、遊覧船乗り場の左側にあるエリア。澄んだ青色に見えた湖の色が、緑色に変わった写真を撮ることができます。これは支笏湖の固定種である水生植物「チトセバイカモ」が水中で咲き終わり、藻になった色。「水が透き通っているので、鮮やかな緑色に写りますよ」と教えてくれました。
■樽前ガロー
樽前ガローは樽前山の南麓にある渓谷。ガロー(切り立った崖)という名の通り、切り立った崖に生える「緑のカーテン」といわれる絶景です。岸本さんおすすめ風景は「新緑の時期には、岩肌に60種以上のコケが絶景を作り出します。静寂の中に川のせせらぎと野鳥の鳴き声が響く幻想的な空間です」とその魅力を語ります。駐車場からガローまでは急な坂があるので歩きやすい運動靴を履いて行くとよいでしょう。
おすすめの撮り方として、スローシャッターで清らかな水の流れを美しく収めるといいという岸本さん。「太陽光が岩肌と水に差し込む写真を撮るために、午前中に来るといいと思います。自然の造形美に圧倒されますよ!夏は涼を求めて行くだけでもOK」と教えてくれました。
津別峠
近年、カメラマンだけでなく観光客にも人気の雲海。登山やロープウェイなどに乗らなければ出会えないと思われがちですが、津別峠は車で行って見ることのできる雲海スポット。津別峠は、屈斜路湖を囲むように広がる屈斜路カルデラの外輪山にある展望施設の中で一番標高が高く、雲海が見られる確率が高いといわれています。
屈斜路湖を埋め尽くすように広がる大雲海。広々とした屈斜路湖に映る雲海と朝焼けの景色は、自然の壮大さと美しさにあふれています。このドラマチックな写真も特別な場所から撮影したのではなく、展望台から撮影したものと岸本さんはいいます。
「たとえ雲海が見られない日でも、きれいな朝日をみるだけでも感動しますよ」と岸本さん。天気の良い日は大パノラマでオホーツク海や知床連山などが見えるそうです。
日によっては雲海の上から日の出が見られることも。この写真は雲海という言葉通り、海のように広がる雲から朝日が顔を出しています。「雲海や太陽の写真は撮り方が難しいと思われがちですが、三脚でカメラを固定するときちんと撮影できますよ。雲海は寒暖の差が激しいときに発生しやすいのでぜひ挑戦してみてくださいね」と岸本さんは教えてくれました。
岸本さんが津別峠を撮影するときは、夜中の3時くらいから撮影し始めるそう。「体力のある方は、東の空が白くなった夜明け前から始めるのもおすすめ。夜と朝のはざまにいるような、星空と朝日が共存した一枚が撮れますよ」と岸本さん。星空が好きな人は挑戦してみてはいかがでしょうか。
オンネトー
阿寒摩周国立公園内にひっそりとたたずむ周囲2.5kmの湖「オンネトー」。秋の紅葉で有名な湖ですが、岸本さんは夏もおすすめとのこと。「季節や天候によって湖面の色が五色に変化するといわれる神秘の湖。場所や時間によってさまざまな見え方がして撮りがいがありますよ」と魅力を話します。
オンネトーの湖畔には散策路が整備されており、展望専用デッキからは雌阿寒岳と阿寒富士が楽しめます。湖面は手前が澄んだ青色、奥が緑色に輝き幻想的。「2つの山と変化する湖の色の対比、そして湖面に揺らいで映り込む木々と草が素晴らしい」と岸本さんは語ります。
湖面に木々が水鏡にくっきりと映り込む一枚を撮るには風のない早朝に行くのがおすすめ。午後からは風が出てしまい、凪の写真は撮りにくいといいます。
見る角度を変えたり、光の条件で見え方が異なるのがこの湖最大の特長。エメラルドグリーンに輝く湖面に沈む木々は、湖水の透明度が高いため鮮明に写り込みます。「展望デッキのほかにも散策路の途中やキャンプ場などの撮影箇所があります。歩きながらお気に入りの色や見え方を見つけてくださいね」。
知床羅臼〜野付半島
動物写真にも力を入れている岸本さん。希少な野生動物を観察することができるのも北海道の魅力の一つです。知床羅臼〜野付半島は手付かずの自然が残り、野生動物たちのありのままの姿を間近に見られるとおすすめします。「春から夏にかけては繁殖期の動物も多く、普段見られないような様子に出くわすことも。生き生きとした動物たちをぜひカメラに収めてほしいですね」と話します。
■羅臼町のシャチ
知床・羅臼では遊覧船に乗り、船上から多くの生き物たちの姿を撮る岸本さん。シャチ2頭が並んで泳ぐ姿を撮影したこの一枚も難しい撮影ではないといいます。「船のすぐそばで群れる姿を見られることが多いので、海面から出てくるタイミングを狙うだけ。奥に陸地を入れることで、根室海峡の広さを表現したダイナミックな写真が撮れます」とコツを話します。
シャチは5月から6月までがピーク。(7月中旬まで見られる可能性あり)8月はマッコウクジラが見ごろを迎えるそう。潮を吹きながら大きな水しぶきをあげるシャチやマッコウクジラの姿は圧巻です。動きが激しいため、シャッターチャンスを見極める必要がありますが、貴重なその姿はぜひカメラに収めておきたいものです。
■野付半島(トドワラ・ナラワラ)
野付半島は砂嘴(さし)と呼ばれる海の砂が堆積した土地。撮影ポイントは主に2箇所で、地盤沈下によって侵食されて立ち枯れたトドワラ(トドマツ)とナラワラ(ミズナラ)があります。岸本さんによると、どちらも貴重な野鳥や野生動物の宝庫で動物写真好きにはぜひ行って欲しいそう。トドワラで夕暮れ時に撮影したこの写真は、アオサギが仲良く並ぶ姿が印象的です。
野生動物や野鳥に目が行きがちですが、花も多く見られる場所なので、天気がいい時は花を撮影するのもおすすめ。「僕は天気がよければ風景、悪ければ動物を撮影します。貴重な旅の時間をぜひ有効活用して一枚でも多くすてきな写真を撮ってほしいですね」と岸本さんは笑顔で話してくれました。
大沼国定公園
「大沼公園は野鳥も多く、四季折々でさまざまな表情を切り取ることができる場所。函館からも近いので足を伸ばして立ち寄ってほしいですね」と岸本さんはいいます。
火山である駒ヶ岳の噴火によってできた大沼・小沼・じゅんさい沼と大小の小島からなる大沼公園は、その美しさは「日本新三景」にも選ばれている絶景スポットです。
大沼には散策路が整備されており、所々で駒ヶ岳を入れた写真を撮影できます。夏の昼間は遊覧船が運航しているので、湖に浮かぶ小島に生い茂る木々の間を縫うように進む船を入れた写真を撮ることができます。
岸本さんがおすすめするのは、早朝の時間。湖面にいくつもの浮島と駒ヶ岳が映り込み、朝霧と相まって幻想的な雰囲気が漂います。「大沼というと晴れた写真が多いですが、このような幻想的な写真も撮影できますよ」。
また、広大な大沼公園一帯を収めるなら、少し離れた日暮山展望台から撮影するといいと話す岸本さん。「晴れた日の早朝に東側から太陽の光が沼や島に差し込んで、大沼の全体像がはっきりと見える一枚を撮影できます。車でしか行けないので、レンタカーなどを活用してみてください」と教えてくれました。
礼文島
これからの時期、ベストシーズンを迎えるのが北海道最北の離島・礼文島。稚内市からフェリーで約2時間かけて行くこの島は、特に7月がおすすめです。「とにかくこの島は自然の宝庫で海がきれい。高山植物が咲く7月は日本海と花、そして遠くに見える利尻富士がマッチしていい写真が撮れます」と岸本さんはその理由を明かします。
約300種類の高山植物が見られることから「花の浮島」と呼ばれる礼文島。島には散策路が整備され、歩きながら撮影を楽しむことができます。「高山植物を手前にし、奥に利尻富士を入れるだけでポスターのような絵になる写真になります」と、岸本さんおすすめの構図も伝授。オレンジ色の高山植物・エゾカンゾウがポイントとして写ります。
■澄海岬
礼文島にある澄海(すかい)岬は、その名の通り澄んだ海のエメラルドブルーが特徴的な岬。展望台からは、美しい弧を描いた入り江と変化に富んだ断崖が並ぶ様子を見下ろすことができます。「礼文島の中でも最も景観のよい場所。太陽の光が差し込むお昼ごろが撮影におすすめです」と岸本さんは話します。
■スコトン岬
礼文島最北端の岬である「スコトン岬」もぜひ行ってほしい場所と話す岸本さん。岬の展望台からは無人島のトド島や晴れた日にはサハリンも見えるといいます。「周囲は原野に囲まれており、最果てに来たと感じる場所。奇岩が荒々しく剥き出しになっていて、澄んだ海の青色とマッチしています」。
岸本さんがぜひ収めてほしいのが、日本海に沈む夕陽の風景。周囲を海に囲まれているだけあり、島では多くの夕陽スポットがあるといいます。「遮るものが何もなく、大きな夕陽を望むことができるのは礼文島ならでは。奇岩とともに撮影するとさらに礼文島らしさが表現できますよ」と教えてくれました。
清里町さくらの滝
斜里川の上流にある高さ約3.7mの滝。毎年6月上旬~8月、約3,000匹のサクラマスの遡上を間近に見ることができます。海を渡ったヤマメ(北海道では「ヤマべ」と呼ばれています)が成長してサクラマスとなり、産卵のために故郷の川に戻り、滝を登ろうと力強くジャンプする姿は見応えたっぷり。「この時期ならではの絶景。サクラマスたちが一生懸命に命を繋ごうとする姿に胸を打たれますよ」と、岸本さんは熱弁します。
平成14年に一般公募で名付けられた「さくらの滝」は全国からカメラマンや観光客が訪れます。多い時だと7〜10匹のサクラマスが一斉にジャンプする姿も見られるのだとか。岸本さんおすすめの時間帯は、昼過ぎの明るい時間帯。太陽の光が滝面に射し込み、コントラストがきいた写真が撮影できるといいます。
「サクラマスのアップを撮影できるので、中望遠レンズがあるといいでしょう。水がきれいなので、水の様子と生き生きとしたサクラマスの姿にピントを当てるといいですよ」と撮影のコツも教えてくれた岸本さん。虫が多いので虫除けアイテムも必須とのことです。
産卵直前になると、サクラマスは銀白色の体に桜色のような色(婚姻色といいます)を帯びるようになるという岸本さん。銀白色とは一味違った姿もぜひ収めてみましょう。