鉄道フォトライターに聞く、ゆる乗り鉄道の旅
北海道の鉄道は、すべての路線で「北海道らしさ」を満喫できます。日本一大きな湿原やサラブレットが駆ける牧場、太平洋・日本海・オホーツク海という三つの海、山岳や田園風景などが織りなす四季折々の情景が車窓に広がります。そのため、本来はすべての路線をおすすめしたい鉄道旅ですが、フォトライターの矢野尚美さんに3線を選んでいただき、それぞれの路線ごとの魅力と見どころを紹介します。
Profile
フォトライター
矢野 直美(やの なおみ)さん
国内外を旅しながら写真を撮り、文章をつづる「フォトライター」。鉄道旅をこよなく愛することから「元祖・鉄子」の愛称でも呼ばれる。写真作品とエッセイを発表しながら、さまざまなメディアで活動。講演会やシンポジウムへの登壇、フォトコンテストなどの審査員も務める。『汽車通学』『おんなひとりの鉄道旅』『鉄子の旅写真日記』など著書多数。
JR釧網本線(せんもう・ほんせん)
北海道の東側、釧路と網走を結んで走るのがJR釧網本線。釧路から網走を目指すと、まずは日本一大きな湿原・釧路湿原が車窓に広がります。鉄道以外の人工物が視界に入らないその風景は、まさに別天地。夏季は「くしろ湿原ノロッコ号」、冬は「SL冬の湿原号」といった観光列車も運行が予定されます。そして緑萌える季節や秋の紅葉が見事な風景を見せてくれる峠を超え、田園を駆け抜けた先で迎えてくれるのが、オホーツク海。流氷が接岸する季節には、観光列車「流氷物語号」が運行予定。
沿線には国定公園や世界遺産認定地、温泉街、無人駅を利用した駅舎喫茶などが点在するJR釧網本線。乗っているだけで楽しく、途中下車して立ち寄りたいスポットがありすぎる路線です。
沿線の観光スポット
- 釧路湿原国立公園
- 日本最大の釧路湿原と、そこを流れる釧路川とその支流、そして湿原を取り囲む丘陵地からなる国立公園です。その総面積は220.7平方kmにも…
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- 摩周湖
- アイヌ語で「カムイトー」(神の湖)と呼ばれ、神秘の場所として崇められてきた摩周湖。周囲約20km、最大水深は212mにもなり、世界最高ラ…
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- 世界自然遺産 知床
- 北海道の東部に位置し、半島の中央には標高1,000m以上の山々が連なる知床。シマフクロウやシレトコスミレなどの絶滅危惧種をはじめ、陸に…
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- 川湯温泉
- 阿寒摩周国立公園内にある川湯温泉は、道東を代表する温泉地のひとつ。今も活動を続ける硫黄山を泉源とし、豊富な湯量を誇ります。硫黄の…
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- 網走流氷観光砕氷船おーろら
- 冬の厳しさが一段と増す1月下旬頃、毎年オホーツク海にやって来る流氷。その流氷をダイナミックに砕きながら進む「流氷観光砕氷船おーろ…
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軽食&喫茶 停車場
オホーツク海岸に建つ、木造駅舎のレストラン
JR北浜駅舎に併設されたレストランで、店内のイスに列車の座席が使われているほか、壁には網棚があったりと鉄道の雰囲気漂うレトロな内装が魅力。「オホーツク海に一番近い駅」として知られており、窓からは雄大なオホーツク海を見ることができます。魚介のだしがきいた「オホーツクラーメン」や、ホタテの貝殻の形をしたかわいいお皿が目を引く「シーフードカレー」など、豊富な海の幸を使用したメニューが人気です。
郵便番号 | 〒099-3112 |
所在地 | 北海道網走市北浜無番地 JR北浜駅内 |
電話番号 | 0152-46-2410 |
営業時間 | AM11:00~PM6:00(ラストオーダーPM5:30) |
休業日 | 火曜日※都合により臨時休業、営業時間の変更等をさせて頂く場合がございます。 |
駐車場 | あり(20台) |
JR函館本線(はこだて・ほんせん)
北海道のやや北に位置する旭川から、札幌を経てニセコ、南に位置する函館までを結ぶ長大路線がJR函館本線。天気予報でいうなら「空知(そらち)」「渡島(おしま)」「後志(しりべし)」などいくつもの地域が入るほどの広大さです。旭川から函館を目指すと、まずは田園風景が広がり、札幌から先の銭函~小樽では驚くほど海岸近くを走る区間があります。小樽から長万部まではいくつもの峠越えが続き、このルートを私たち鉄道ファンは愛情を込めて「山線」と呼んでいます。山岳風景を堪能したのち、車窓に広がるのは内浦湾。列車は海沿いを駆け抜け、やがて函館へたどり着きます。
JR函館本線も、沿線に国定公園や温泉街が点在。札幌、小樽、ニセコ、大沼公園、函館など、その名を耳にすることも多い魅力的な観光スポットがたくさんあります。こちらも乗っているだけで楽しく、途中下車して立ち寄りたいスポットがありすぎる路線です。
沿線の観光スポット
- JRタワー
- JR札幌駅直結、ショップやシネコン、展望室などを備える大型複合商業施設。最上階の展望室からは、自然豊かな街並みや碁盤の目に広がる札…
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- 小樽運河
- 緩やかなカーブを描く全長1,140mの運河に沿って、石造倉庫や歴史的建造物が立ち並ぶ「小樽運河」は、どこを切り取っても絵になる小樽の観…
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- 羊蹄山(蝦夷富士)
- 羊蹄山は円錐型の成層火山で、富士山に似た美しい姿から「蝦夷富士(えぞふじ)」と呼ばれ親しまれています。標高は1,898m。4種類の登山…
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- 大沼国定公園
- 活火山である駒ケ岳と、その噴火によってできた大沼湖、小沼湖、蓴菜(じゅんさい)沼をはじめ大小の沼、自然豊かなその風景が広がることで…
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- 函館朝市
- 函館駅から徒歩約1分とアクセス抜群の人気スポット・函館朝市。終戦直後の1945(昭和20)年に、近隣の農家が函館駅前で始めた野菜や果物…
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- 函館市熱帯植物園
- 北海道ではなかなかお目にかかれない「アイスクリームの木」「パンの木」など、ユニークなネーミングの木を含む約300種・3,000本の植物が…
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JR花咲線(はなさき・せん)
JR花咲線は愛称で、北海道の中部にある滝川と、東に位置する根室を結ぶJR根室本線のうち、釧路~根室間がそう呼ばれています。釧路から列車に乗って根室を目指すと、やがて見えてくるのが、野鳥たちのサンクチュアリ・別寒辺牛湿原(べかんべうし・しつげん)。見渡す限りの湿原には鳥たちが舞い、時にはタンチョウの姿も。水と大地が織りなす別世界を駆け抜け、畑や牧場風景の中を進んだ先で見えてくるのが、まさに果てしない風景といった感のある海岸段丘。その情景に旅情をかきたてられながら、列車は日本最東端の駅・東根室駅を経て、終着・根室駅へ。
JR花咲線には、沿線にラムサール条約地やサンマの水揚げで知られる漁港が点在するほか、日本酒やウイスキーの製造元もあります。こちらも乗っているだけで楽しく、途中下車して立ち寄りたいスポットがありすぎる路線です。
沿線の観光スポット
- 納沙布岬
- 本土最東端(北緯43度23分、東経145度49分)に位置し、日本で一番早く朝日と出会える場所としても有名です。岬の先端には北海道内最古の…
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- 花咲灯台車石
- 花咲ガニの産地として知られる根室・花咲港。花咲灯台のすぐ下には、放射状節理構造の玄武岩で車輪を想像させる形をした奇岩、根室車石が…
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- 風蓮湖
- 恵まれた自然環境から多様な植物や野鳥の宝庫として知られる「風蓮湖」。周囲約96kmの巨大な汽水湖で、周囲には海岸砂丘、草原、湿地、森…
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別寒辺牛湿原
国内有数の原生的な自然が残された湿原
1993年、ラムサール条約に登録された広大な湿原。手つかずの自然が広く残されているほか、多くの鳥たちが羽を休める水鳥の楽園でもあります。約240種類の鳥類が記録されており、絶滅危惧種のタンチョウや天然記念物オジロワシなど貴重な生物に出会えることも。「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」が主催するカヌーツーリングや、湿原内を通る花咲線の車窓から絶景を楽しめるほか、厚岸水鳥監察館の2階からは雄大な湿原を眺めることができます。
郵便番号 | 〒088-1101 |
所在地 | 北海道厚岸郡厚岸町別寒辺牛 |
電話番号 | 0153-52-5988 |
厚岸蒸留所
牡蠣のまち厚岸で生まれるジャパンウィスキーの蒸留所
厚岸の豊かな自然環境と、スコットランドの伝統的製法が融合した、ここにしかないウィスキーを生産している厚岸蒸留所。「スコッチの聖地」と呼ばれるスコットランド西部のアイラ島と、厚岸の自然環境が似ていることをきっかけに、2016年からウィスキーの蒸留を始め、現在では10種類以上のウィスキーが生産されています。通常立ち入ることができない蒸留所内を見て回る「厚岸蒸留所見学ツアー」の参加予約は「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」で。
郵便番号 | 〒088-1121 |
所在地 | 北海道厚岸郡厚岸町住の江2丁目2番地 |
電話番号 | 0153-52-4139 |
備考 | 厚岸蒸留所見学ツアーについては、「厚岸味覚ターミナル コンキリエ」のHPをご確認ください。 https://www.conchiglie.net/tour/tour6 |
碓氷勝三郎商店
貴重な根室の地酒を造り続ける日本最東端の蔵元
明治20年創業、日本最東端に位置する老舗の蔵元として知られる碓氷勝三郎商店。「より多くの人がお酒を楽しめるように」との初代当主の思いを胸に、100年以上の歴史と伝統が込められたお酒を造り続けています。その芳醇な味わいから根室の地酒として多くの人に愛されている代表銘柄「北の勝」は、根室市内の酒屋で購入が可能。また、毎年1月に発売される季節限定の銘柄「絞りたて」は、あまりの人気から入手困難な日本酒として知られています。
郵便番号 | 〒087-0041 |
所在地 | 北海道網根室市常盤町1丁目6 |
電話番号 | 0153-23-2010 |