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北海道の品種「山幸」が国際ブドウ・ワイン機構に登録!
3本を飲み比べたおすすめマリアージュとは!?

北海道の品種「山幸」が国際ブドウ・ワイン機構に登録!3本を飲み比べたおすすめマリアージュとは!?

2020年11月、北海道のぶどう品種「山幸/Yamasachi」が、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)に品種登録されました。今回は、3つのワイナリーが造る「山幸」のワインの特徴と、それぞれに合ったマリアージュをご紹介します。北海道に来たら、ぜひ味わってみてください!

紹介してくれるのはこの方!

「祥瑞 札幌(しょんずい さっぽろ)」店主

松岡 修司(まつおか しゅうじ)さん


■プロフィール

1958年、東京都生まれ。サラリーマン時代のバブル期を東京で過ごし、ほぼ毎晩ワインを飲みながら多彩な料理を食べ歩く。1993年にサッポロファクトリー「札幌葡萄酒館」の開業に携わり、そのまま札幌に移住。2008年にオーナーソムリエとして「祥瑞 札幌(しょんずい さっぽろ)」をオープン。

【主な資格】ソムリエ、日本酒唎酒師、焼酎唎酒師

池田町で独自開発された「山幸」でワインを造る3つのワイナリー。

OIV(国際ブドウ・ワイン機構)は、フランスに拠点を置く、ぶどうの栽培やぶどう品種、ワイン造りに関する研究機関で、現在46か国が加盟しています。EUへ輸出・販売するワインでは、OIVが独自のぶどう品種として認めたものだけをラベルに表示できるのですが、日本固有品種としては2010年に「甲州」、2013年に「マスカット・ベーリーA」が登録されています。そして2020年11月、日本で3例目の登録品種となったのが、十勝生まれの「山幸」。醸造用品種「清見」と在来種の「山ぶどう」を掛け合わせた、池田町独自開発品種です。


この山幸を使って、十勝地方の3つのワイナリーがワインを造っています。まずは、池田町の「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」。「十勝ワイン」のブランドで知られる、道内では最も歴史のあるワイナリーで、山幸を開発したのもこのワイナリーです。2つ目は、帯広市の「相澤ワイナリー」。完全無農薬・無化学肥料で栽培したぶどうを使ったワイン造りにこだわる、家族経営の小さなワイナリーです。そして3つ目は、芽室町の「めむろワイナリー」。町の公民連携事業として、町内の畑作農家たちが2020年に開設したワイナリーです。


山幸のワインは、山ぶどうに由来する酸味が特徴です。個性がはっきりしていて、海外の赤ワイン用品種で造ったワインとは明らかに味わいが異なります。たとえるなら、自由奔放な野生児といったところでしょうか。「耐寒性交配品種」で、十勝のように寒い地域でないとうまく育たないということも、OIVに認められた要因だと思います。個性豊かなワインなので、好きな人なら絶対にハマる味わいです。

十勝ワインの「山幸」には、牛すじのデミトマト煮込みの酸味がマッチ。

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所の「山幸」は、十勝ワインのフラッグシップワインです。ワインのアルコール感が豊かに立ちのぼり、スモモのような酸味が鼻腔をくすぐります。クルミやナッツのような香ばしさや、雨上がりの森の中を歩いたときのような清々しい芳香も感じます。透明度が高く、光に当てるとその輝きが美しいワインです。


2020年のものなので、酸味は控えめですね。角の取れた丸みのある酸味で、バルサミコ酢を煮詰めたときのような旨みもあります。口の中で旨みが一度濃縮して、それがどんどん広がっていく……これは本当においしいワインです。この品種の魅力を知りつくしたワイン造りがなされているのでしょう。さすがは山幸の生みの親です。


山幸のワインは、魚介類の料理よりもやはり肉料理。十勝彩美牛を使った、牛すじのデミトマト煮込みはいかがでしょう。デミグラスソースのコクとトマトの酸味が、ワインの酸味とマッチして、口の中で渾然一体となります。これぞまさにマリアージュ! あとには、牛すじ肉とワインの旨みが残ります。この料理と合わせることで、一気にワインの果実味が現れてきて……まるで別のワインのようになりました。

ノンフィルターワインの「龍之介」なら、甘みのあるジャーマンポテトを。

相澤ワイナリーの「龍之介」は、あえてフィルター濾過をしないノンフィルターワイン。完全無農薬・無化学肥料で栽培した山幸の香味成分をできるだけ残すためでしょう。ロゼのような淡い色あいですが、れっきとした赤ワインです。熟れたネーブルのような香りで、一口飲んでみると、やさしい酸味が口の中でふわりと広がります。色合いは淡いですが、深い味わいのワインですね。まるでブルゴーニュワインのようです。


この「龍之介」に合わせるなら、ちょっと甘めの料理がいいでしょう。今回は十勝産のじゃがいもとベーコンを使ったジャーマンポテトを用意しました。ベーコンの塩味とじゃがいもの甘みが、ワインの酸味をグッと引き立ててくれます。寒暖差が大きい十勝で育った甘みの強いじゃがいもだからでしょうね。この料理を食べてからの方が、ワインの酸が口の中いっぱいに広がるのが感じられます。


色が淡い「龍之介」には、ジャーマンポテトくらいの色合いの料理がぴったりです。さっきの牛すじのデミトマト煮込みのような色と味の濃い料理だと、このワインの酸味が立ちすぎてしまいますから。個人的には、ワインの色と料理の色を合わせると、マリアージュがしやすいと考えています。名づけて「グラデーション・マリアージュ」、ぜひお試しください。

酸味の強い「かなえる 山幸」には、ラクレットハンバーグがおすすめ。

めむろワイナリーの「かなえる 山幸」は、このワイナリーで初醸造されたファーストヴィンテージ。「夢を叶える」という農家たちの思いからから名づけられました。このワイナリーでは、十勝のぶどうの力と個性をフルに生かした「畑ごとのワインづくり」を行っていて、ワインのラベルにはぶどう生産者の名前を印刷しています。


グラスに注ぐと、ザクロのような香りの中に、木の実やナッツの香ばしさが感じられます。口に含むと、まるで梅ジャムのような酸っぱさを感じます。ファーストインパクトが強いワインですね。この酸味に慣れた2口目からは、山幸特有のワイルドなぶどうの風味が楽しめます。


このワインには、旨みの強い肉料理がいいでしょう。十勝の牛肉とラクレットチーズを使った、ラクレットハンバーグとのマリアージュを試してみます。とろりとしたチーズがかかったハンバークを食べてからワインを飲むと……この酸味が肉の旨みを包み込み、チーズの塩味がその酸味をやわらげてくれます。ワインだけで飲んだときよりも、ワインが一段とおいしくなりました。


ちなみに今回使ったチーズは、同じ芽室町の「TOYO Cheese Factory」さんのラクレット。十勝管内の生乳を使用して3カ月以上熟成したもので、そのまま食べてもおいしいですが、加熱すると香りが立ち上り、より深みのある味わいに。このチーズと合わせるだけでも、立派なマリアージュになりますね。

酸味のあるワインが好きなら、「山幸」のワインはきっと大満足のはず。

山幸という同じ品種を使っても、ぶどうの樹齢や育った土壌、ワイナリーの造り方によって、まったく違う味わいのワインになります。ソムリエとして、今回の飲み比べとマリアージュはとてもいい経験になりました。


北海道で最も古い歴史を持つワイナリーと新進気鋭のワイナリーが、同じ十勝エリアで、同じ山幸を使ってそれぞれの味を競い合っているのも興味深いですね。十勝を訪れて、山幸が育った厳しくも雄大な風土の中でこれらのワインを味わってみてください。酸味のあるワインがお好きな方なら、きっと気にいると思います。


今回紹介した、「十勝ワイン 山幸」「龍之介」「かなえる 山幸」の3本は、私のお店「祥瑞 札幌」でも用意しています。十勝が誇る「山幸」のワイン、北海道に来たらぜひお試しください。


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