小樽の歴史を守ること

小樽の歴史を守ること

札幌からも近く、JRでも車でもアクセスしやすい小樽は、多くの観光客が訪れる必見の人気スポットです。古い赤レンガ造りの倉庫に沿って流れる古風な趣のある運河が特徴で、ここには日本で他に類を見ない、異国情緒溢れる魅力的な街並みがあります。かつて小樽はニシン漁で栄え、日本で最も裕福な都市の1つであり、戦前は富と人口の両方において札幌市よりも発展を遂げていました。その富の象徴の一つである旧青山別邸は観光施設「にしん御殿小樽貴賓館」を構成する建物の一つで、木造2階建て延べ約630平方メートル。青山家が1923年(大正12年)、現在の価値で約30億円もの巨費を投じた建築物です。旧青山別邸オーナーの佐藤さんにお話を伺いました。

Profile

にしん御殿小樽貴賓館旧青山別邸オーナー

佐藤美智夫(さとう みちお)さん

ニシン漁の大網元青山家が遺した別荘「旧青山別邸」の華麗さと豪壮さに惚れ込み、小樽市の文化財を保存するためにこの建物を購入。1年間の修復を経て、1989年(平成元年)4月に一般公開されました。

ニシンが小樽に与えたもの

小樽の富はニシン貿易からもたらされました。1860年代の明治時代の初めには、年間のニシンの漁獲量は約30,000トンでしたが、1897年までに、その数は1億トン近くに達します。この間、小樽の人口も1,000人強から6万人にまで増加。地元の人々はこの時期を「ニシンのゴールドラッシュ」と呼んでいます。小樽沖では大量のニシンが獲れ、主に肥料に加工されて本州に出荷されました。当時の日本の農業の近代化に大きな役割を果たします。これがニシンの価値が高い理由です。


この富の流入は、現在の小樽を象徴する倉庫や銀行の建物だけでなく、郊外にはニシン貿易で裕福になった人々によって豪華な設備を備えた別荘が建てられました。その中でも最も立派なのは、青山家が建てた旧青山別邸です。建物は、壮観であるだけでなく、小樽市の歴史的証人でもあります。現在のオーナーである佐藤さんが、北海道の歴史と国内の価値ある美術品や骨董品を保存するため、旧青山別邸を買い取り1989年(平成元年)に小樽貴賓館として一般公開しました。


北海道の歴史を留める

「当時、この旧青山別邸を購入するのは非常に困難でした。私の資金が限られているだけでなく、大手ホテルチェーンと競争しなければなりませんでした。」最終的に、佐藤さんの歴史への情熱は、前オーナーを動かしました。「この建物と、そこに収められた素晴らしい日本の美術品のコレクションを保存したかったのです。なぜなら、それは北海道の歴史の一部であるだけでなく、日本の歴史の重要な部分だからです。」それは国の有形文化財に登録されていることから明らかです。しかし、このような歴史的建造物をメンテナンスすることは容易ではありません。「建物は、日本固有の樹種と今や製造中止のガラスを使用して建てられた建築物です。今のところ、当時の方法で改修・維持できる材料を調達することができましたが、これがどれだけ長く続くかは分かりません。」このような古い建物のメンテナンス作業を行うことができるのは、唯一京都にある請負業者だけです。

パンデミックの間で

「もう一つの問題は、来場者数が不安定なことです。開園当初は多かったのですが、次第に減っていきました。小樽港に停泊する大型クルーズ船がここを景勝地として推奨してから、外国人観光客が増え始めましたが、現在はコロナの影響を受けています。パンデミックの間はずっと赤字で運営していましたが、この困難な時期を乗り切る連帯の証として、従業員の数を維持しました。」と言います。「しかし、ここ数か月でいくつかの有望な兆候が見られます。感染症の影響で外国人観光客は減りましたが、地元の子供たちがこの地域の歴史に興味を持ち始めているのを見てうれしく思いました。どうやら小学生たちから、クラス全員で訪問したいと訴えたそうです。そのことがとても嬉しかったです。」

情熱のプロジェクトの共有

最後に佐藤さんは、この旧青山別邸を引き継いで現在の形で運営し続けるのに適した後継者を見つけることにも懸念を抱いています。「私はこの建物に心と魂を注ぎました。これは情熱のプロジェクトであり、この情熱を喜んで共有してくれる人々を見つけたいと思っています。」当然のことながら、様々な投資家や企業がこの物件にある程度の関心を寄せていますが、ほとんどの人は商業的な観点から価値を見出しています。「例えば、ホテルに改修して簡単にお金を稼ぐような方には譲渡したくありません」と話しました。

これらの課題にも佐藤さんは果敢に挑みます。「時々、建物が私に話しかけていると思うことがあります。それは、単に最高入札者に売るのではなく、これらの遺産を保存するための最善な方法を模索するようにと私に言うのです。」奇妙に聞こえますが、古い建物には独特の精神性があり、佐藤さんの言葉に信憑性を与えています。旧青山別邸は、小樽市の北側の祝津の丘にあります。「このような比較的小さなスペースで、これほど多くの歴史的作品のコレクションを見られる場所は他にありません。さらに、壮大な庭園を見渡す館内レストランでは、新鮮な海の幸や地元の旬の食材をご堪能いただけます。特に夏の百花繚乱の眺めは素晴らしいです。いつの日か小樽へお越しの節は是非お立ち寄りいただけたら幸いです。」

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