旅をすることが活力になる!「リハビリ・ツーリズム」ってどんなもの?

旅をすることが活力になる!「リハビリ・ツーリズム」ってどんなもの?

北海道では、心が晴れやかに、体も元気になる旅を「ケアツーリズム」と名づけて展開しようと考えています。そのケアツーリズムの1つ「リハビリテーション・ケアツーリズム(リハビリ・ツーリズム)」とは、病気や障がいを持つ人とその家族にとって「活力」となる旅のこと。どんなものなのか、モニターツアーに同行してみました。

リハビリのプロと一緒に、冬の札幌中心部を旅してみよう。

今回、モニターツアーに協力してくれたのはOさん。脳の病気の後遺症で、左半身に麻痺が残っています。夏場は杖を使ってゆっくりと移動できるのですが、雪や氷がある冬場はなかなか思うように出かけられないそうです。「札幌中心部の日帰り旅行ですが、ミュンヘン・クリスマス市に久しぶりに行けるのが楽しみです」。


待ち合わせは札幌市営地下鉄のさっぽろ駅。モニターツアーでサポートしてくれる理学療法士(PT)さんと合流したOさんは、PTさんから今日の行程を説明してもらいます。同時に、PTさんは正しい介助のために、O さんの状態について最初にしっかりヒアリングします。


PTさんは今回のモニターツアーのために、車いすをレンタルしていました。札幌駅構内にある北海道ユニバーサル観光センター・札幌で借りたもので、当日の返却ならワンコイン(500円)でOKという手軽さも魅力です。

特定非営利活動法人北海道ユニバーサルツーリズム推進協議会


モニターツアーの最初の目的地は、ここから地下鉄で1駅の「さっぽろテレビ塔」。階段の上り下りで手すりを使うときはOさんの左側に、杖を使って歩く時は右側に立ちながら、PTさんは状況に応じて動きやすいように介助してくれます。左半身の麻痺に加え、左の視力や聴力も落ちているため、話しかける時はなるべく右側からにしています。


無理をせず体を使うことも、リハビリ・ツーリズムのポイント。

自分の足で歩ける場所はなるべく歩く、それが「リハビリ・ツーリズム」の大事なポイントです。Oさんも大通駅で地下鉄を下りてから、さっぽろ地下街をゆっくりと歩きます。「札幌市の場合、冬でも地下街など、地下の歩行空間を歩けるのでいいですね」とPTさん。壁の広告やいろいろなお店などを見ながら歩けるのも飽きなくていいそうです。


エレベーターでテレビ塔の展望室へ上がった2人。今日は晴れていて、街並みが遠くまで見渡せます。「上から見ると、札幌がずいぶん変わったことがよくわかりますね」とOさん。



展望台にあるお土産コーナーで盛り上がるOさんとPTさん。テレビ塔の人気キャラ「テレビ父さん」のグッズから定番の北海道土産まで、豊富なラインナップに目移りしているよう。リハビリ・ツーリズムはあくまで観光旅行なので、こうした時間も大切なのです。

状況に合わせて、徒歩と車イスを使い分けながら進む。

テレビ塔から外に出ると、積雪や凍結でOさんが歩くには危険な路面状況でした。こういう場合は無理をせずにレンタルした車イスを使います。「特に冬の横断歩道はツルツルになっていることが多いので」とPTさん。


向かった先は、大通公園2丁目で開催されている「ミュンヘン・クリスマス市」。地面の状況に応じて、徒歩と車イスを使い分けながら会場を巡ります。華やかでクリスマスムード一色の場内に、Oさんの顔もほころびます。すっかり気心が知れた2人は、「あれ何でしょうね?」「これカワイイ!」など、ほとんど女子旅のような賑やかなムードに。そんな時でもPTさんは常にOさんの安全に気を配り続けています。




会場内には、クリスマスメニューやホットドリンクなどのお店が並ぶフードブースがあります。たくさんのメニューの中から、2人はホットココアをチョイス。甘くて温かいひとときが、旅の気分を盛り上げてくれます。


観光を楽しむことがリハビリにつながる、新しい旅のスタイル。

昼食の時間までは少し時間があったので、2人は近くのデパートに立ち寄ることに。ここでポイントとなったのがエスカレーターでの介助です。乗り降りの際に、介助する側とされる側とのタイミングを合わせないと転倒につながってしまいます。息を合わせて慎重に進みます。


お楽しみの昼食は、北海道名物の「松尾ジンギスカン」。今日のモニターツアーでは、ゆっくり食事できる個室のある店舗を予約しています。


ここは味付きジンギスカンの有名チェーン店で、最初に店員さんに野菜をセッティングしてもらったら、あとは自分たちで肉を焼くスタイル。PTさんはOさんの様子をじっと見ながら、介助の必要性やその程度を見計います。



Oさんは右手でトングや箸が持てるため、介助の必要はそれほどないようです。鉄製のジンギスカン鍋はとても熱いので、PTさんは引き続きそこに気を配っています。Oさんに今回のモニターツアーについて尋ねると、「観光スポットやイベントにも行けたし、おいしいランチも食べられたし、もう大満足です」。PTさんも「観光を楽しむことがリハビリにもつながるというのは目からウロコでした。今後もリハビリ・ツーリズムに関わっていきたいですね」と話します。Oさんの明るい笑顔が、北海道のリハビリ・ツーリズムの将来性を物語っているようでした。




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