北海道の冬の神秘!奇跡のジュエリーアイス

北海道の冬の神秘!奇跡のジュエリーアイス

北海道の大自然を撮り続けている写真家の岸本日出雄さん。北海道の冬だけに見られる「ジュエリーアイス」の秘密や、野生動物を撮影するタイミング、場所、撮影方法のコツなど、北海道の冬の絶景について伺いました。

Profile

  • Ⓒ岸本日出雄

写真家、札幌コマーシャルフォト代表取締役

岸本日出雄(きしもと ひでお)さん

1950(昭和25)年北海道佐呂間町生まれ。高校生の頃から写真に興味を持ち、大手広告代理店勤務の写真部を経て独立。1980(昭和55)年に札幌コマーシャルフォト設立。2008(平成20)年より、写真を通して北海道の自然や野生動物の魅力を表現し続けている。

氷の宝石? ジュエリーアイスとは

  • ジュエリーアイスを撮影する場合、11mmの超広角レンズをお勧めします。Ⓒ岸本日出雄
  • 波や潮風にさらされたときに形成される自然な形は、雪の結晶を連想させます。Ⓒ岸本日出雄

北海道・十勝にある豊頃町の大津海岸では、冬だけの絶景「ジュエリーアイス」が楽しめます。川の水が凍って海岸に流れ込むことで生まれるもので、きらめく虹色の美しさを誇る氷は刻一刻と変化し、夜明けの時間帯が最も美しく輝きます。この氷に、北海道の写真家・浦島久さんが「ジュエリーアイス」と命名したところ、全国から豊頃町に問い合わせが殺到。ニューヨークタイムズ電子版にも掲載されるなど、大きな反響を呼びました。


ジュエリーアイスは、北海道の自然や野生動物を追い続けている岸本さんの重要なテーマの1つです。その作品では、時間や角度によって多彩に変化するジュエリーアイスの美しい表情を見事に捉えています。自分の目でジュエリーアイスを見てみたいという方は、帯広空港から車で約1時間、「北海道の新絶景」と呼ばれる大津海岸へ向かいましょう。

ジュエリーアイスとマジックアワー

  • 気温がマイナス25度に達する2月の夕方、夕日が反射して氷が濃いオレンジ色に染まります。Ⓒ岸本日出雄
  • 1月下旬の午前5時、満月が地平線に沈む時間帯。満潮から干潮に変わる時期に大きなジュエリーアイスが出現するⒸ岸本日出雄
  • 1月の早朝、雲が太陽の光で赤く染まり、その色が氷に反射します。同じ時間帯でも形や色は日によって異なります。Ⓒ岸本日出雄

「北海道の冬の風物詩として知られる流氷と勘違いされがちですが、ジュエリーアイスはまったくの別物です」と岸本さん。オホーツク海の流氷は、ロシアのアムール川の水が凍ったもので、塩分を含んでいます。対してジュエリーアイスは、北海道で3番目に長い川・十勝川が凍ったもの。厳寒期の十勝川では氷の厚さが20cmにも達し、その氷が塊になって川から海に運ばれるのです。「潮位の変化によって、ジュエリーアイスは海岸に打ち寄せられます。十勝川の水が凍っただけで、流氷のようにプランクトンなどの生物がいないため、透明度が非常に高い氷です」。一般的には、1月中旬~2月中旬が撮影に適した時期ですが、岸本さんのおすすめは3月とのこと。「ジュエリーアイスがどんどん溶けて変化していく様子は一見の価値があります。この時期、日中は氷が溶け始めますが、夜になると冷え込んで再び凍ります。そのため、前日とは形や色を変えた、まったく違うジュエリーアイスになります。その美しい景色を目にするのが至福のひとときです」と岸本さんは語ります。


岸本さんは、空がまだ暗い日の出までの20分間を「マジックアワー」と呼んでいます。ジュエリーアイスの撮影に最適な時間帯が、このマジックアワーです。「この時点でカメラをセットアップすると、紫色からオレンジ色、黄金色に変化する空とジュエリーアイスを撮影することができます」。冬の早朝なので防寒対策は必須。ハンドウォーマー、ネックウォーマー、イヤーマフなどの防寒具の着用をおすすめします。

冬は野生動物の撮影にもぴったり

  • 3月の夕方、道北の天塩川付近でのエゾシカの群れ。Ⓒ岸本日出雄
  • 2月、羅臼港発の流氷クルーズ船の旅で、オオワシが流氷の塊に降りようとする瞬間を撮影。Ⓒ岸本日出雄

ジュエリーアイスのほかに、マジックアワーは野生動物の撮影にも絶好のチャンスです。野生動物が最も活発になるのは夜明け。この時間にエサを求めて出てくる動物たちを、日の出を背景にした雄大な構図で撮影できます。岸本さんからは「エゾシカなど北海道の野生動物を鮮明に捉えたいなら、音を立てないように気をつけながら遠くから望遠レンズを使い、根気強くシャッターチャンスを待ちましょう」とのアドバイスが。


北海道の野生動物の撮影には、冬がベストシーズンと言われています。夏には植物に隠れて見つけづらい動物の姿が、葉が枯れた冬になるとよく見えるようになるからです。それでも岸本さんは1年を通して動物たちの姿を追っています。「5月から6月の新緑の時期には動物の赤ちゃんが現れますし、季節を問わず、一生に一度の景色に出会えるチャンスがありますから」。


野生動物の思い出を写真に残したい人に、岸本さんがおすすめするのは知床の流氷クルーズ船。羅臼港から出航した船は、約30分で国後島が見える場所に到着し、流氷と一緒にワシがいる景色をカメラに収めることができます。「絶滅危惧種で、日本で一番大きなワシと言われている、体長約1メートルのオオワシも見ることができます」。岸本さんも、日本にこんな素晴らしい景色があると知って感激したほどの光景です。

撮影の際にはヒグマに注意!

  • この写真を撮った時のヒグマとの距離はわずか4メートル。Ⓒ岸本日出雄
  • 撮影機材の入ったリュックを噛まれた瞬間。Ⓒ岸本日出雄

北海道の野生生物の中にはヒグマもいます。岸本さんは、ムササビ撮影の際にヒグマに遭遇しました。その年は雪解けが早かったため、冬眠から目覚めたクマが岸本さんとガイドさんに急接近してきたのです。逃げる前に、一生に一度のスナップを撮ることができましたが、九死に一生の大ピンチだったことも確か。「ヒグマが行き来するような場所はできるだけ避けてください。もし遭遇してしまった場合、ヒグマは自分より強い動物を恐れるので、深く低い声で叫ぶなどのトリックが役立つ場合があります」。

冬も、冬以外も絶景がたくさん

  • アイスバブル。凍った気泡がはっきりと見える。Ⓒ岸本日出雄

岸本さんがおすすめするもう1つの絶景スポットは、帯広から車で約1時間の糠平湖。湖に沈む幻の橋「タウシュベツ川橋梁」について、岸本さんは「橋と川の美しい景色を同時に楽しみたいなら、寒い冬が一番おすすめ」とのことです。この時期は水位が低く、橋脚の半分が冬の背景を反映して、湖の底にある沈んだ橋もはっきりと見えるそうです。


また、冬の糠平湖では、運が良ければ「アイスバブル」も見ることができます。湖底から湧き上がるガスが、湖面にたどり着く前に水の中で凍ってしまう自然現象のこと。氷に閉じ込められた無数の気泡が、まるで時が止まっているかのような幻想的な風景を作り出す大自然の芸術です。例年1月中旬から2月上旬に見られますが、湖面の氷の上に雪が積もってしまうと見られなくなる貴重な絶景です。


今回は冬の絶景撮影ポイントを紹介しましたが、岸本さんは「北海道は、四季がはっきりと分かれているので、冬以外の撮影ポイントもたくさんあります」と話してくれました。北海道を旅して、四季折々の美しい景観を撮影してみませんか? 

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