世界的な探検家が拓く、北海道のワイナリーの未来

世界的な探検家が拓く、北海道のワイナリーの未来

舟津圭三さんは、世界で初めて犬ぞりで南極大陸を横断したメンバーの1人であり、世界の有名な峰に登った山岳ガイドとしても知られる探検家です。2001年、北極海の真ん中である日本人起業家と出会ったことで、舟津さんはNIKI Hills Wineryの総支配人を引き継ぐことになりました。世界を股にかけた探検家は、なぜ第二の人生の舞台を北海道のワイナリーに決めたのでしょうか?

Profile

NIKI Hills Winery総支配人

舟津圭三(ふなつ けいぞう)さん

1956年大阪生まれ。1984年に帆かけ自転車でサハラ砂漠縦断、1988年にスキーと犬ぞりでグリーンランドを縦断。1989年7月から1990年3月にかけて、6名からなる国際隊の一員として史上初の犬ぞりによる南極大陸横断に成功。20年以上のアラスカ在住を経て、2015年、仁木町のNIKI Hills Wineryの総支配人に就任。

まったく想定していなかった第二の人生

アラスカに20年以上住んでいた舟津さんに、転機となる出会いがあったのは2001年。砕氷船による北極点ツアーに講師として乗船した時、参加していたDACグループ代表の石川和則さんと意気投合したのです。冒険好きの石川さんと舟津さんは、その後も一緒に北極点と南極点を踏破し、北米最高峰のデナリ(マッキンリー)の登頂も果たしました。舟津さんの人柄に惚れ込んだ石川さんは、「ワイナリーをやるから北海道に来ないか」と誘ったのです。夫婦でワインが大好きな舟津さんはワイナリーの敷地を視察に訪れましたが、そこは雑草が生い茂り、木々が密集する荒れ地でした。それが逆に舟津さんの開拓者精神に火を点けました。北海道とアラスカは、自然風土や歴史が似ていることも知り、舟津さんはまったく想定していなかったワイナリーの総支配人の道を歩み始めました。

荒れ地から世界が認めるワイナリーへ

北海道仁木町にあるNIKI Hills Wineryは、2015年に設立されました。丘の中腹に27haの敷地を持つワイナリーからは、仁木の山々と海が望めます。山や海からの養分が作物に栄養を与えるほか、土壌にはぶどう栽培に適した天然ゼオライトが多く含まれており、ワイン造りに適した環境です。園内にはぶどう園のほか、果樹園、イングリッシュガーデン、森の小道、ビール醸造所、レストラン、宿泊施設があります。


オーナーの石川さんが掲げた「世界の卓越性を追求する」という理想のもと、舟津さんはNIKI Hills Wineryのために各分野の専門家を集めました。伝説のソムリエである熱田貴さん、造園家として名高い福森久雄さんをはじめとする精鋭が集結。チームの努力が身を結び、雑草の茂った荒れ地は緑豊かなワイナリーに変わりました。地元の農家がリンゴ、サクランボ、ハニープラム、食用ぶどうなどを植える果樹エリアでは、季節限定の新鮮な果物やジュース、ジャムなどを提供しています。


2017年に生産された白ワイン「HATSUYUKI2015」は、日本ワインコンクール2017で銀賞を受賞しました。新進気鋭の醸造家だった麿直之さんが手がけたワインは、デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード2020(ゴールド、ブロンズ)、デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード2019(シルバー、ブロンズ)、インターナショナルワインチャレンジ2019(シルバー)、ニューヨークインターナショナルワインコレクション2019(ブロンズ)など、さまざまな国際認定を獲得しました。

NIKI Hills Wineryでは過ごし方も多彩

NIKI Hills Wineryでは、農地や一部の森林などの制限区域を除いて、園内のほとんどが無料で訪問者に開放されています。園内の売店でワンカップワインやフルーツジュースを購入し、庭の芝生にピクニックマットを広げて、景色を眺めながら仁木町の特産品を楽しむことができます。


ほかに有料ツアーとして、ゴルフカートツアー、ワイナリーツアー、ガーデンツアー、舟津さんによるネイチャートレッキングツアーと電動アシスト付きマウンテンバイク周遊ツアーのほか、冬季限定でスノーシュートレッキングツアーとスノーシュー&テントサウナが用意されています。ゴルフカートツアーでは、一般の観光客には開放されていないブドウ畑や森林地帯にカートで移動し、スタッフが園内のプライベートな景勝地を紹介してくれます。木々の間から差し込む太陽の鮮やかさと頬を撫でる涼しい風が、ワイナリーの魅力を全身で感じさせてくれます。


当日予約もできるワイナリーツアーでは、ワイナリーのスタッフが園内の絶景スポットやワインを寝かせる樽庫など、ここでしか見られない風景を案内してくれます。ワイナリーツアーは、3種類以上のワインまたはジュースのテイスティングがついています。


ガーデンツアーでは、シーズンで異なるナチュラルガーデンの花々の彩や香りを五感で体感できます。ワイナリーを借景としたガーデンの造成や北海道の植物について、ヘッドガーデナーの玉田さんが案内してくれるのも貴重な体験です。

この地に息づく開拓魂が未来を拓く力に

有料ツアーで見逃せないのは、舟津さんのネイチャーガイドです。NIKI Hills Winery本館裏の森は、専門家の助言で入念に整備され、荒れ地から光と生命力に満ちた森へと変貌を遂げました。舟津さんは、この森のほかにも園内にキャンプファイヤー・ハンモックエリアや林道などを整備しています。案内したいのは、およそ百年前の人々が犬ぞりを使って魚や生き物を運んでいた山道。犬ぞりのプロの舟津さんにとって大切なルートです。雪が積もる冬はスノーシューを履いて、夏には入りにくい場所にも案内します。美しい景色に加えて、世界的な探検家から冒険や自然への洞察を聞くことができる貴重なツアーです。


電動アシスト付きマウンテンバイクでの周遊ツアーでは、舟津さんの案内でヴィンヤード(ブドウ畑)やオーチャード(果樹園)の景色を眺めながら周遊します。仁木町の自然と気候を五感で楽しむツーリングツアーで、途中で立ち寄る町内のワインやビールの醸造所でお土産の購入も可能です。


NIKI Hills Wineryをはじめとする地域のワイナリーでは、若者が地元に戻って働き始めていて、その活気が多くの観光客を呼び込んでいます。仁木町には、この地域独自のフロンティア・スピリットが息づいているのかもしれません。


NIKI Hills Wineryでは、冬季にはレストラン・宿泊施設が休業となりますので、公式サイトでご確認ください。また、入場には事前予約が必要です。ワイナリーに行く前に、必ずウェブサイトで確認の上で予約をしてください。

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