もっと知りたい!先住民族「アイヌ」の文化

もっと知りたい!先住民族「アイヌ」の文化

※タイトル画像:国立民族共生公園で行われる舞踊公演(提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団)


日本の先住民族であるアイヌの歴史や文化を学び、その多彩な魅力に触れることは、あなたの旅をより深く、そして視野を大きく広げてくれるでしょう。

さあ、魅力的なアイヌの世界へ行ってみませんか?

地名に見るアイヌ語あれこれ

※画像:アイヌ語に由来する洞爺湖


土地には、そこに暮らした人々が呼びならわした地名がつけられています。北海道でもいたるところにアイヌ語を由来とする地名があり、その場所がアイヌ民族にとってどのような存在であったかを知ることができます。例えば、登別や稚内のように「べつ」や「ない」のつく地名は、アイヌ語で川を表す「ペッ」や沢を表す「ナイ」に由来し、河川に関連する地名であることがわかります。アイヌ語に由来した北海道の地名のいくつかをご紹介しましょう。


稚内 →「ヤム・ワッカ・ナイ(冷たい飲み水の沢)」

知床 →「シリ・エトク(大地の突き出たところ)」

釧路 →「クスリ(温泉)」もしくは「クシル(越える路)」など諸説あり

帯広 →「オ・ペレペレケ・プ(川尻がいくつにも裂けている場所)」

旭川 →「チュク・ペッ(秋の魚=鮭+川)もしくは(波+川)」

洞爺 →「ト・ヤ(湖・岸)」

石狩 →「イシカラ・ペッ(非常に曲がりくねった川)」

札幌 →「サッ・ホロ・ペッ(乾いた大きい川)」

小樽 →「オタ・オル・ナイ(砂浜の中の川)」


そのほかにも、秋田県には比内という地名がありますが、これはアイヌ語で小石の多い川を意味する「ピ・ナイ」に由来するとされ、このことからアイヌ民族の居住圏は北海道だけでなく、津軽海峡を隔てた東北地方にまで及んでいたことがわかります。

北海道の豊かな自然の恵みに育まれたアイヌの食文化

※画像:出汁がよく効いた具沢山の「オハウ」(提供:アイヌ文化発信カフェ・ピラサレ)


北海道は豊かな自然がもたらす食材の宝庫。かつてのアイヌ民族の食生活は、そんな大自然の恵みに支えられてきました。食材の調達方法は、安定的な食料確保のため狩猟、漁撈、山菜採集、農耕などに分散し、調理方法も煮る、茹でる、焼く、蒸す、炒める、揚げる、干す、凍結させるなどのほかに、新鮮なものは生のまま素材の風味を活かして食されました。普段の食事は、肉や魚、山菜などを煮込んだ「オハウ」と呼ばれる汁ものと、ヒエやアワを炊いた穀物粥である「サヨ」が食卓の中心で、他に季節ごとの食材を使った副菜がつくなど、1年を通じて豊かな食生活が営まれました。

秋鮭は皮まで余すことなく大切に利用

毎年、秋に川を遡上してくる鮭は、カムイが人間に贈る食料として大切に扱われました。新鮮なものは生で食べたり、汁ものや焼きものなどにしてその味覚を十分に楽しんだあと、残りは内蔵を出して天日に干し、生乾きになったものを炉端の天井に吊るし燻製にして、保存食として冬の食卓を支えました。また、皮は靴や着物の素材とするなど、捨てるところなく様々な用途に使われました。


※画像:「サッチェプ(乾いた魚)」と呼ばれる保存食づくりの様子(提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団)

秋鮭は皮まで余すことなく大切に利用

アイヌ民族をテーマにした国立施設・民族共生象徴空間「ウポポイ」で、アイヌの文化を体感しよう!

※画像①:国立アイヌ民族博物館外観、画像②:国立アイヌ民族博物館展示室、画像③:国立アイヌ民族博物館展示風景

(①~③提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団)


2007年に国連で採択された「先住民族の権利に関する宣言」を受けて、2020年7月に北海道・白老町にオープンした「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、日本初のアイヌ民族をテーマにしたナショナルセンターです。「ウポポイ」とは、アイヌ語で(おおぜいで)歌うことを意味した愛称です。日本の先住民族であるアイヌの文化を伝え、その復興と発展を促す拠点になっています。

その中心施設である「国立アイヌ民族博物館」では、「イタク(私たちのことば)」「イノミ(私たちの世界)」「ウレシパ(私たちのくらし)」「ウパシクマ(私たちの歴史)」「ネプキ(私たちのしごと)」「ウコアプカシ(私たちの交流)」という6つのテーマに沿った展示内容で、アイヌ民族の文化を体系的に理解できるようになっています。

アイヌ伝統の踊りや楽器演奏のほか、体験プログラムも充実!

ポロト湖畔に広がるウポポイの広大な敷地には「国立民族共生公園」も整備され、アイヌの文化を体感できるさまざまなプログラムが展開されています。アイヌの伝統芸能を鑑賞できる「体験交流ホール」では、美しい映像をバックに伝統の踊りや「ユカラ」と呼ばれる英雄叙事詩の語り、ムックリ(口琴)の演奏などを実演。「工房」では、木彫や刺繍といった工芸の技を間近に見て、体験できるプログラムを実施しています。ほかにも、鮭と野菜を使ったアイヌの伝統料理「チェプオハウ」を味わえるカフェがあるなど、アイヌの伝統文化を存分に堪能できる施設やプログラムが充実しているので、ぜひ体感してください。

※画像:体験交流ホールで行われる舞踊公演(提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団)

アイヌ伝統の踊りや楽器演奏のほか、体験プログラムも充実!

多様性を尊重する多文化・多民族共生社会の実現に向けて

※画像提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団


1970年代以降、世界中の先住民族が連携して、それぞれの国での政治的、経済的、社会的地位の向上や「先住民族の本来の権利」の保障を求める議論が、国際的に行われるようになりました。2019年に「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(アイヌ施策推進法)」が国会で可決され、その理念を象徴する施設として2020年に日本初のアイヌ民族をテーマにしたナショナルセンター「ウポポイ(民族共生象徴空間)」が誕生しました。

ウポポイは、アイヌ文化の復興・発展のための拠点となる国立施設で、将来に向けて先住民族の尊厳を尊重し、差別のない多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築いていくための象徴として位置づけられています。道内にはウポポイの他にもアイヌ民族の歴史や文化を紹介する施設があるので、北海道へお越しの際は最寄りの施設にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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